福島県の危険な外来生物

〜みんなで協力して駆除しましょう〜

by ナチュラリスト 横田清美


特定外来生物

 特定外来生物とは、海外起源の外来生物であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものの中から国が指定したもの。特定外来生物は飼育・栽培・保管・運搬・販売・譲渡・輸入などが原則として禁止されている。これらに違反した場合、最高で個人の場合三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金、法人の場合一億円以下の罰金が科される。


オオハンゴンソウ

File1852.jpg File1855.jpg

 北アメリカ原産のキク科の多年草で、明治時代に観賞用として日本に持ち込まれた。繁殖力が強く全国各地で野生化し、福島県では1990年代から野生化が目立つようになった。長く放置すると爆発的に繁殖して在来植物を駆逐し、オオハンゴンソウのみが生える環境に変わり、生態系や農林業や観光に大きな影響を及ぼす恐れがある。種子とイモ状の根(地下茎)で増える。
【見分け方】
 花は7月下旬〜9月に咲き、花の中央部分は半球状に盛り上がる。花びらはやや下に垂れ下がる。葉はヨモギに似ている。茎の高さは1m〜3m。
【駆除方法】
 種子ができる前にスコップ等を使って根ごと掘り取り、土を取り除いてその場で天日にさらして枯らす。その際、イモ状の根(地下茎)が土中に残らないようにする。再発しなくなるまで駆除を続けなければならない。人手が足りないなどで「掘り取り」が困難な場合は、応急措置として鎌などで刈り払えばオオハンゴンソウの繁殖を一時的に遅らせることはできる。結実している場合は、種子を焼却処分にする(燃えるゴミに出す)。

オオハンゴンソウの危険性と駆除方法の研究報告

環境省のリーフレット


オオキンケイギク

File0230.jpg File0231.jpg

 オオキンケイギクは北アメリカ原産のキク科の植物で特定外来生物に指定されている。観賞用として日本に持ち込まれたが、繁殖力が強く野生化して生態系に悪影響を与えている。福島県内では民家の庭や企業の花壇などによく植栽され、道路脇や農地や河川敷などで野生化し始めている。品種改良された八重咲きのものも危険なので駆除しましょう。
【見分け方】
 花は全体が黄色。5〜7月にかけて黄色のコスモスに似た花を咲かせる。花びらの先端は鶏のトサカ状に切れ込み、葉は細長い。花茎の高さは0.3〜1m。
【駆除方法】
 刈り払いまたは引き抜きを行い、その場に放置して枯らす。結実している場合は、できれば種子の部分を焼却処分にする(燃えるゴミに出す)。


アレチウリ

File1324.jpg File1851.jpg

 アレチウリは北アメリカ原産のウリ科のつる植物で特定外来生物に指定されている。輸入作物に混じって侵入したとみられる。繁殖力が凄まじく、農地や樹木を覆い隠すように葉を広げ、農林業に被害を与える。花にはスズメバチ類が多数集まる。福島県内ではほぼ全域に分布し、河川敷や道路脇や農地に多く見られる。
【見分け方】
 粗い毛を密生したつる性の植物。葉はキュウリに似る。開花〜種子時期は8〜10月。果実はコンペイ糖のような形で鋭いトゲが密生している。
【駆除方法】
 なるべく早期に刈り払いまたは引き抜きを行い、その場に放置して枯らす。結実している場合は、できれば種子の部分を焼却処分にする(燃えるゴミに出す)。花に集まるスズメバチや果実のトゲに注意しましょう。


アカボシゴマダラ

File5068.jpg File5069.jpg

 ベトナム北部、中国、台湾、朝鮮半島に原産するチョウ。日本に持ち込まれた個体が野生化し、関東地方を中心に分布域を拡げている。蝶マニアによる人為的な放蝶の可能性が高いといわれている。福島県では2013年頃から見つかりだした。エノキを食草とするため、日本産のチョウとの競合や交雑が心配されている。
【見分け方】
 翅は白黒の縞模様に見え、在来種のゴマダラチョウに似ている。夏型成虫は後翅後部に赤い斑紋を持つ。春型は赤い斑紋を持たず、黒色部分が少なく全体に白っぽい。在来種のゴマダラチョウは後翅に赤い斑紋が無く、アカボシゴマダラ白化型より黒い部分が多いことで区別される。
【駆除方法】
 捕獲して駆除する。


オオクチバス

File1062.jpg File1063.jpg

 オオクチバスは北アメリカ原産の淡水魚で特定外来生物に指定されている。釣りの対象として日本に持ち込まれ、意図的な放流により全国各地に拡がった。通称ブラックバスまたはバス。バスが増えると在来魚や水生昆虫などが減り、漁業や生態系に深刻な被害をもたらす。オオクチバスを釣ること自体は禁止されていないが、リリース(釣った魚をそのまま戻すこと)を禁止する自治体が増えている。福島県はリリースを禁止していない。福島県ではほぼ全域に分布し、湖沼やため池や流れの緩い河川に生息している。
【見分け方】
 全長30〜50cm程度。上あごよりも下あごが前方に突き出る。コクチバスよりも口が大きく、上あごの後端は目よりも後方に達している。
【駆除方法】
 可能であれば池などの水抜きをし、外来魚だけを捕獲して駆除する。キャッチ&リリースを禁止にする(一部の湖沼を除外して禁止する方法もある)。人工産卵床を利用した駆除方法等もあるが、漁業関係者や自治体などの協力がないと難しい。


コクチバス

File1064.jpg File1065.jpg

 コクチバスは北アメリカ原産の淡水魚で特定外来生物に指定されている。釣りの対象として日本に持ち込まれ、意図的な放流により全国各地に拡がった。通称ブラックバスまたはバス。オオクチバスよりも低水温を好み、流れの速い河川でも生息できる。繁殖力が強く、コクチバスが増えると在来魚や水生昆虫などが減り、漁業や生態系に深刻な被害をもたらす。コクチバスを釣ること自体は禁止されていないが、リリース(釣った魚をそのまま戻すこと)を禁止する自治体が増えている。福島県はリリースを禁止していない。福島県では湖沼やダム湖や河川に広く分布している。
【見分け方】
 全長30〜50cm程度。上あごよりも下あごが前方に突き出る。オオクチバスよりも口が小さく、上あごの後端は目より後ろには達しない。
【駆除方法】オオクチバスと同様。


ブルーギル

File1764.jpg File1765.jpg

 ブルーギルは北アメリカ原産の淡水魚で特定外来生物に指定されている。1960年に日本に持ち込まれ、全国各地の淡水域に拡がった。流れが緩やかな河川や湖沼などに生息する。親魚が稚魚を保護するため繁殖力が強い。ブルーギルが増えると在来魚や水生昆虫が減り、漁業や生態系に悪影響をもたらす。ブルーギルを釣ることは禁止されていないが、リリース(釣った魚をそのまま戻すこと)を禁止している自治体が増えている。福島県はリリースを禁止していない。福島県では湖沼や流れの緩やかな河川に広く分布している。
【見分け方】
 成魚は全長20前後。雄のえらの後端に青黒い斑点がある。若い個体は体側に縞模様があり美しい。
【駆除方法】オオクチバスと同様。


ウチダザリガニ

File0232.jpg File0233.jpg

 ウチダザリガニは北アメリカ原産で特定外来生物に指定されている。食用目的で北海道に持ち込まれ、その後、福島県、滋賀県、長野県、千葉県などにも密放流され、急速に全国に拡がりつつある。低温水・高温水・汽水環境にも耐え、繁殖能力が高い。雑食性で、水質浄化能力が高い貝類や水草を減らすことから水質悪化や生態系の破壊を招く。福島県では裏磐梯や西郷村などの湖や各地のダム湖で相次いで見つかっている。
【見分け方】
 体長(はさみを除いた長さ)は最大で約20p。体の色は茶色。はさみの付け根に白い模様がある。
【駆除方法】
 かごわなによる捕獲(大型個体のみ)や素手による捕獲が考えられるが、根絶させるための決定的な方法が見つかっていない。


ウシガエル

File0234.jpg File0235.jpg

 ウシガエルは北アメリカ原産で特定外来生物に指定されている。食用のために日本に持ち込まれ、全国各地の池沼や流れの緩やかな河川に生息している。肉食性で口に入る大きさであれば何でも食べる。繁殖力が強く、増えると在来の水生生物が減少する。福島県では会津地方の一部を除き、ほぼ全域に拡がりつつある。
【見分け方】
 成体の体長は最大で20p。幼生は最大13p前後。鳴き声は牛に似た声で「ブォーン、ブォーン」と鳴くが、時折高い声で「ニャー」とも鳴く。
【駆除方法】
 かごわなやタモ網や釣りによる捕獲。警戒心が強くてタモ網での捕獲は難しいが、夜間は比較的捕獲しやすいと言われている。幼生や卵の時期に捕獲して駆除するのが効果的である。幼生で越冬するため、秋から早春までの間に池干しして外来種のみを駆除する。


ガビチョウ

File0236.jpg File0237.jpg

 ガビチョウは東南アジア原産の鳥で特定外来生物に指定されている。ペット用に輸入・販売されたが、鳴き声がうるさいため、飼い主が野に放ち野生化したと思われる。藪のある環境を好むが、地面で採食するため積雪量の多い地域には少ない。繁殖力が強く、増えると在来種のウグイスやホオジロなど営巣環境が同じ野鳥を駆逐すると思われる。福島県では会津地方の一部を除き、ほぼ全域に拡がりつつある。
【見分け方】
 全長20〜25cm。体は茶色で、目の周りに青白い縁取りがある。複雑な鳴き声で一年中よく鳴く。
【駆除方法】
 これといった駆除方法が見つかっていない。ガビチョウが営巣しやすい藪地をなくせば減ると思われるが、在来の鳥にも影響が及んでしまう。カスミ網を使って鳥を捕獲し、特定外来生物のみ駆除する方法も考えられる。国や自治体が一刻も早く駆除にのり出すことを願いたい。


ソウシチョウ

File1144.jpg File1145.jpg

 ソウシチョウは中国南部や東南アジアに生息する鳥で、1980年代にペット用として日本に持ち込まれた。遺棄されたものが野生化し、栃木県以南および山形県で定着している。天然自然林でも繁殖するため生態系への影響が大きいとみられている。やぶのある環境を好み、群れで行動し、高密度で繁殖するため、ウグイスなど同じ環境に生息する在来鳥を駆逐する恐れがある。福島県でも稀に見つかっており、いわき市、福島市、須賀川市、郡山市、古殿町、安達太良山麓で目撃例がある。ソウシチョウを目撃した際は福島県自然保護課に情報提供してください。
【見分け方】
  全長約15cmでほぼスズメ大。体は暗緑色、のどは黄色、翼に赤と黄の斑紋があり、嘴は赤い。
【駆除方法】
 これといった駆除方法が見つかっていない。生態系への影響が出る前に、国や地方自治体で駆除方法を研究・確立してほしい。


アメリカミンク

File0238.jpg File0239.jpg

 アメリカミンクは北アメリカ原産のイタチ科の動物で、特定外来生物に指定されている。毛皮利用の目的で養殖用に日本に持ち込まれたが、養殖場から逃げ出したものが野生化し、北海道・宮城県・福島県・群馬県・長野県などで生息分布を拡げている。河川や池沼沿いに生息し、鳥類・魚類・甲殻類・両生類・ネズミなどを捕食する。天敵が少ないため個体数が増加し、漁業・養鶏・家畜・生態系などへの影響が心配されている。福島県では阿武隈川沿いと溜め池周辺で多数繁殖している。
【見分け方】
 雄の頭胴長は45cmくらい、尾長は35cmくらいでテンほどの大きさ。雌はひとまわり小さい。養殖個体は白色・褐色・黒色など毛色は様々だが、野生化した個体は褐色〜黒褐色のものが多い。
【駆除方法】
 かごわなによる捕獲が考えられるが、わな猟資格が必要。県と市町村が連携し、関係団体・地域住民などの協力を得ながら駆除するのが望ましい。地域住民が市町村に対して駆除要望を粘り強く行っていくことも重要。


アライグマ

File0240.jpg

 アライグマは北アメリカ原産の動物で特定外来生物に指定されている。ペットとして日本に持ち込まれたが、気性が荒くて飼い主になつかないため、手に負えなくなった飼い主が野外に放棄し野生化したらしい。ほぼ全国で生息が確認されている。雑食性で、各地で農作物・果樹・養殖魚などに深刻な被害を与えている。また、建造物への侵入・損壊、病原体の媒介、鳥類への営巣妨害等も問題になっている。福島県では2000年に南相馬市で初めて確認され、その後県内各地で目撃情報が寄せられており、生息分布が拡大している。
【見分け方】
 頭胴長40〜60cm、尾長20〜40cm。白色の顔に黒色系のマスクを着けたような外見で4〜7つの輪模様を尾に持つ。
【駆除方法】
 かごわなによる捕獲が考えられるが、わな猟資格が必要。アライグマによる被害を確認した場合は、自治体の担当者に報告し駆除を依頼する。県と市町村が連携し、関係団体・地域住民などの協力を得ながら駆除するのが望ましい。


その他の特定外来生物

カミツキガメ

「カミツキガメ」(国立環境研究所 侵入生物データベース)

 カミツキガメはアメリカ原産のカメ。ペットとして買われていたものが遺棄され関東地方の一部で野生化し、生態系への影響が心配されている。かまれると大けがをする恐れがある。福島県では希に目撃されているが、繁殖は確認されていない。福島県でカミツキガメを目撃した際は福島県自然保護課にぜひ連絡してください。

チャネルキャットフィッシュ

「チャネルキャットフィッシュ」(国立環境研究所 侵入生物データベース)

 チャネルキャットフィッシュは北アメリカ原産の淡水魚。養殖目的で日本に持ち込まれたが、市場的価値がなく、逆に在来魚を減らす漁業被害を与えている。国内では利根川水系、霞ヶ浦、琵琶湖・淀川水系などで定着している。福島県では阿武隈川水系で見つかっており、今後要注意の魚である。福島県でチャネルキャットフィッシュを目撃した際は福島県自然保護課にぜひ連絡してください。

セイヨウオオマルハナバチ

「セイヨウオオマルハナバチ」(国立環境研究所 侵入生物データベース)

 セイヨウオオマルハナバチはヨーロッパ原産の昆虫。農業資材としてトマト等の温室栽培の受粉に利用されていたが、逸出個体と在来種の交雑や盗蜜により在来植物の受粉を阻害する影響が指摘されている。定着しているのは北海道のみで、いくつかの県で逸出個体が見つかっている。福島県でもかつて逸出個体が見つかったが、最近は見つかっていないようだ。福島県でセイヨウオオマルハナバチを目撃した際は福島県自然保護課にぜひ連絡してください。

オオカワヂシャ

「オオカワヂシャ」(国立環境研究所 侵入生物データベース)

 オオカワヂシャはヨーロッパからアジア北部原産のゴマノハグサ科の多年草。在来種のカワヂシャと交雑してホナガカワヂシャと呼ばれる雑種を形成し、その雑種は発芽能力のある種子を生産することが確認されており、遺伝的攪乱が危惧されている。岩手・秋田・山形・山梨・石川を除く本州全都府県、徳島・愛媛・大分・佐賀の各県に定着している。福島県では県北地域で見つかった記録がある。福島県でオオカワジシャを目撃した際は福島県自然保護課にぜひ連絡してください。

ナルトサワギク

「ナルトサワギク」(国立環境研究所 侵入生物データベース)

 ナルトサワギクは東アフリカ原産のキク科の植物。緑化の種子に混じって日本に持ち込まれて野生化したと考えられている。繁殖力がきわめて強く、アレロパシー作用も持つため在来植物を駆逐する危険性が大きい。有毒物質を含むため、家畜や草食動物への影響も心配される。日本の各地で急速に分布域を広げている。福島県では2006年にいわき市で見つかっている。福島県でナルトサワギクを目撃した際は福島県自然保護課にぜひ連絡してください。


福島県の生態系被害防止外来種

 環境省は侵略性が高く、我が国の生態系、人の生命・身体、農林水産業に被害を及ぼす又はそのおそれのある外来種を「生態系被害防止外来種リスト」にまとめました。福島県に生息する主な生態系被害防止外来種(外来生物法の規制対象外のもの)は以下の通りです。

■アメリカザリガニ、カラドジョウ、タイリクバラタナゴ、ソウギョ、アオウオ、ニジマス、ミシシッピーアカミミガメ(通称ミドリガメ)、イタチハギ、オオオナモミ、オオブタクサ、オニウシノケグサ(トールフェスク)、オランダガラシ(クレソン)、キクイモ、キショウブ、コカナダモ、コセンダングサ、シナダレスズメガヤ、セイタカアワダチソウ、チョウセンアサガオ属、ハリエンジュ(ニセアカシア)、ハルザキヤマガラシ、ホテイアオイ、ムラサキカタバミ、メマツヨイグサ、アメリカネナシカズラなど。

Bt0510.gif環境省のホームページに関連記事が載っています。
環境省ホームページ「外来生物法」


ナチュラリスト横田清美事務所
〒963-0201 福島県郡山市大槻町字殿町81-1
 電話;090-9422-9357(8時〜22時)、E-mal;kyky22h@yahoo.co.jp

Bt0388.gifトップページへ