オオハンゴンソウの危険性と駆除方法の研究報告〔2020年8月12日、自然観察の会ふくしま、文責・写真;横田清美〕 福島県のオオハンゴンソウの現状北米原産の植物で、特定外来生物に指定されているオオハンゴンソウが福島県のほぼ全域で見つかっている。オオハンゴンソウは繁殖力が強く、在来植物を駆逐して生態系や農林業に悪影響を及ぼす恐れがあるが、福島県ではほとんど駆除が進んでいない。道路脇、川沿い、空き地などで多く見られ、貴重な湿原や景勝地にも侵入している。特に北塩原村、郡山市、二本松市、福島市、南会津町、檜枝岐村、猪苗代町はオオハンゴンソウの個体数が多い。 特定外来生物 オオハンゴンソウ
オオハンゴンソウの危険性 当会の会員らは裏磐梯で12年間にわたってオオハンゴンソウの駆除と生態研究を行ってきた。 @森林に侵入して群生すると、森林の維持管理や植林が困難になり、林業に被害をもたらす。 A初めは小群落で10年〜15年ぐらいおとなしく生育するが、環境になじむと爆発的に繁殖する。 Bオオハンゴンソウが増えると在来植物が減り、生物の多様性が失われる。 C群生すると、駆除してもすぐに再生してしまう。 D農薬に強く、通常使用の十倍の濃度でないと根が枯れない。(ラウンドアップマックスロードで実験済み) E湿地やヤブの中や急傾斜地など人がなかなか踏み込めない場所にも侵入してしまう。 オオハンゴンソウが侵入した貴重な自然地や景勝地
裏磐梯では駆除が追い付かず裏磐梯五色沼の東にある群生地では、環境省による駆除事業が2008年から2019年まで実施され、12年間でおよそ138万株を駆除したが、オオハンゴンソウの再生スピードがあまりにも速く、いまだ根絶のめどはたっていない。秋元湖の群生地はまったく手つかずの状態だ。足場の悪い場所にも侵入しており、根絶するには数十年かかるとみられる。
オオハンゴンソウの特徴と駆除方法【オオハンゴンソウについて】明治時代に観賞用として日本に持ち込まれ、庭などに植えたものが野生化した。県内では1990年代から野生化が目立つようになった。茎の高さは1〜3m。花は7月下旬〜9月上旬。ヒマワリの花を小さくしたような黄色い花を咲かせる。花の直径は5〜6cm。下方の葉は深く裂けてヨモギに似る。地下茎と種子で増える。一株当たり約1600粒の種子をつけるといわれている。外来生物法で特定外来生物に指定され、栽培、生きたままの運搬などが禁じられている。
【駆除方法】 種子ができる前にスコップやねじり鎌を使って根ごと掘り取り、土を取り除いてその場で天日にさらして枯らす。その際、イモ状の根(地下茎)が土中に残らないようにする。再発しなくなるまで駆除を続けなければならない。
オオハンゴンソウが定着して間もなければ1〜3回の駆除で簡単に無くすことができる。群生したまま長年放置すると根絶に10年以上もかかることがあるので注意が必要だ。 この花もオオハンゴンソウの仲間ですハナガサギク
ハナガサギクはオオハンゴンソウの園芸品種。福島県では民家の庭でふつうに栽培されている。花が八重咲きである以外はオオハンゴンソウと特徴が同じ。危険性も同じなので駆除するのが望ましい。 新たな問題〜イノシシがオオハンゴンソウを助ける 裏磐梯五色沼で昨年、オオハンゴンソウが根絶したはずの場所で再発生しているのが見つかった。そこはイノシシがミミズ等を食べるために土を掘り返した場所だった。イノシシの「掘り返し」によってオオハンゴンソウの発芽に有利な環境に変わり、土中で休眠していた種子が目覚めて再発生したとみられる。また、イノシシは泥浴びが大好きなため、オオハンゴンソウの種子を含んだ泥を体に付着させて種子を運んでいる疑いがある。
※参考文献;磐梯朝日国立公園裏磐梯地区オオハンゴンソウ駆除業務報告書(2008年〜2019年)環境省 <駆除および調査の期間> <自然観察の会ふくしま> <問合せ先> |