危険な外来植物 県内全域に分布拡大

〜オオハンゴンソウ 貴重な湿地や景勝地にも侵入〜

文責・写真;横田清美

 北米原産の植物で、国の危険な外来生物に指定されているオオハンゴンソウが県内のほぼ全域に分布を広げたことが「自然観察の会ふくしま」の調査で分かった。道路脇、川辺、草原、湿地、空き地などで見られ、貴重な湿地や景勝地にも侵入していた。オオハンゴンソウは長く放置すると爆発的に繁殖して在来植物を駆逐し、生態系や農林業や観光に大きな影響を及ぼす恐れがある。北塩原村の秋元湖や五色沼付近の湿地林、郡山市湖南町の鬼沼地区や三代地区、二本松市のあだたら高原スキー場などでは大規模に群生しており大変危険な状態だ。市町村または県レベル(国立公園は環境省)で、早急に対策を講じる必要がある。

特定外来生物 オオハンゴンソウ

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▲裏磐梯五色沼付近に群生するオオハンゴンソウ

オオハンゴンソウの危険性

 当会の会員らは裏磐梯で12年間にわたってオオハンゴンソウの駆除と生態調査を行ってきた。
その結果、オオハンゴンソウは次のような危険があることが分かった。

@群生すると、他の草木が育たなくなるので自然植生が失われる。

A裏磐梯の例では、10年〜15年ぐらい放置した場所で爆発的な繁殖が起きている。
 ※特に湿地や林の中に侵入すると驚異的なスピードで広がる。

B湿地に入ると根張りが強力になり、駆除が困難になる。

C群生すると、植林や森林の維持が困難になるので、森林の減少や土砂崩れ等の災害を招く恐れがある。

D群生すると、駆除しても落ち葉の下で休眠している種子が発芽してすぐに再生してしまう。

E農薬に強く、通常使用の十倍の濃度でないと根が枯れない。(ラウンドアップマックスロードで実験済み)

F湿地やヤブの中や急傾斜地など人がなかなか踏み込めない環境にも侵入してしまう。

オオハンゴンソウが侵入した湿地や景勝地

所在地 場所 群落の規模 備考
北塩原村 秋元湖 大規模 国立公園
北塩原村 五色沼の東にある湿地林 大規模 国立公園
郡山市湖南町 鬼沼周辺 大規模 湖岸沿いは国立公園
二本松市 あだたら高原スキー場 中規模 ゲレンデ内、奥岳の湯付近
福島市土湯 ビッキ沼周辺 小群落が広範囲にある ミズバショウ群生地
会津地方 阿賀川流域 流域に広範囲にある
南会津町 屏風岩と木賊温泉周辺 中規模 景勝地、温泉地
檜枝岐村 小沢平 中規模 尾瀬登山口
猪苗代町 達沢原生林とその周辺 中規模 県の緑の文化財
須賀川市 翠ヶ丘公園 北芝生広場付近に群生 日本の都市公園100選
福島市 浄土平湿原 小群落 国立公園特別保護地区
会津若松市 赤井谷地沼野植物群落 湿原の周囲に群生 国天然記念物、日本の重要湿地
猪苗代町 猪苗代湖北岸 ヨシ原に侵入 白鳥渡来地、国の天然記念物
福島市佐原 あづま総合運動公園 ヤマユリ群生地に侵入 ヤマユリ群生地
白河市 白川関跡、天狗山、南湖公園 小群落 カタクリ等の群生地
西郷村 阿武隈川源流域 小群落 甲子温泉、下流に種拡散の恐れ

裏磐梯では駆除が追い付かず

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▲裏磐梯での駆除作業の様子2018年撮影(写真左)と秋元湖の群生地2019年撮影(写真右)

 裏磐梯五色沼の東にある大群生地では、環境省による駆除事業が2008年から実施され、12年間でおよそ138万株を駆除したが、オオハンゴンソウの再生スピードがあまりにも速く、根絶するにはあと5年以上かかる見込みだ。
 ところが、環境省は財政難から今年の駆除事業を打ち切った。駆除事業を請け負ってきた自然観察の会はボランティアで駆除作業を続ける方針だが、資金も人材も不足しており駆除が追い付かない恐れがある。
 秋元湖の大群生地は、五色沼の駆除で手いっぱいのため、まったく手つかずの状態だ。足場の悪い場所にも侵入しており、根絶するには数十年かかるとみている。

【オオハンゴンソウについて】

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 明治時代に観賞用として日本に持ち込まれ、庭などに植えたものが野生化した。県内では1990年代から野生化が目立つようになった。茎の高さは1〜3mになり、7月下旬ごろから黄色い花を咲かせる。下方の葉は深く裂けてヨモギに似る。地下茎と種子で増える。一株当たり約1600粒の種子をつけるといわれている。外来生物法で特定外来生物に指定され、飼育や栽培などが禁じられている。

【駆除方法】

 種子ができる前にスコップなどを使って根ごと掘り取り、土を取り除いてその場で天日にさらして枯らす。その際、イモ状の根(地下茎)が土中に残らないようにする。再発しなくなるまで駆除を続けなければならない。
 オオハンゴンソウは定着初期なら1〜3回の駆除で簡単に無くすことができるが、長年放置すると無くすまでに10年以上もかかることがあるので注意が必要だ。
 人手が足りないなどで「掘り取り」が困難な場合は、応急措置として鎌などで刈り払えばオオハンゴンソウの繁殖を一時的に遅らせることはできる。
 駆除はオオハンゴンソウが生えている土地の所有者が行うべきだが、それが困難な場合は地域住民や行政が協力することが大切だ。広がってしまえば「他人事」ではなくなる。県民一人一人が「駆除しよう」の声を上げ、みんなで結束して駆除してほしい。

新たな問題〜イノシシがオオハンゴンソウを助ける

 裏磐梯五色沼で昨年、オオハンゴンソウが根絶したはずの場所で再発生しているのが見つかった。そこはイノシシがミミズ等を食べるために土を掘り返した場所だった。イノシシの「掘り返し」によってオオハンゴンソウの発芽に有利な環境に変わり、土中で休眠していた種子が目覚めて再発生したとみられる。また、イノシシは泥浴びが大好きなため、オオハンゴンソウの種子を含んだ泥を体に付着させて種子を運んでいる疑いがある。
 会津若松市の赤井谷地湿原でも今年の7月17日、イノシシの群れが湿原に侵入した痕跡が多数見つかった。イノシシによってオオハンゴンソウの種子が湿原の奥深くまで運ばれる恐れがある。オオハンゴンソウの駆除だけでなく、イノシシの防除対策も同時に行う必要がある。

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▲赤井谷地湿原で見つかったイノシシの侵入痕跡(写真左)と足跡(写真右)


※参考文献;磐梯朝日国立公園裏磐梯地区オオハンゴンソウ駆除業務報告書(2008年〜2019年)環境省


<駆除および調査の期間>
  2008年7月〜2020年7月

<駆除および調査のスタッフ>
  会長  五十嵐 悟
  事務局 高橋 淳一
  理事  横田 清美
  理事  宍戸 弘道
  理事  安藤 勇司
  理事  古川 文子
  理事  鷲尾 敏
  理事  草野 秀雄
  理事  二階堂 幹夫
  会員  古川 正男
  会員  林 克之
  会員  佐藤 友幸
  会員  飯田 悟
  会員  飯田 朝代
  会員  五十嵐 久美子

<自然観察の会ふくしま>
  〒960-2155 福島県福島市上名倉字粕内31番地